偏頗弁済とは、全ての債権者に対し負っている債務の全額を弁済することができない状態であるにもかかわらず、債権者平等の原則、つまり、全ての債権者は債権額に応じて平等に扱われるべきであるという考え方に反し、特定の債権者のみ優遇するような弁済を行うことをいいます。 破産を検討する段階で一部の債権者にのみ弁済をすることは、偏頗弁済となるのが通常です。偏頗弁済を行うと、破産手続開始決定後に破産管財人から当該弁済が否認され、弁済を受けた相手方は受領した金銭を取り戻される場合があります。また、悪質なものについては、免責不許可事由に当たり、破産手続によって免責が受けられなくなるおそれもあります。
偏頗弁済に関する注意事項
会社の破産申立てを受任するにあたり、代表者の方から、「この取引先にだけは迷惑をかけられないから、何とか支払いをしたい。」というご相談をお受けすることがしばしばあります。しかしながら、会社が破産申立てを検討しているような状態でこのような弁済を行うことは偏頗弁済に当たり、取引先に支払った金銭も、破産管財人に取り戻されてしまう可能性があります。その場合には、取引先は、弁済を受けた日から年6パーセントの遅延損害金も支払わなければならないことになり、より大きな損害を被らせてしまう結果となりかねません。また、上記のとおり代表者個人の手続において免責を受けられなくなるおそれもありますので、破産申立てをご依頼をいただいてからの弁済は厳に慎まれるよう説明しております。
どうしても迷惑をかけたくない取引先があるという方は、下記取引先への偏頗弁済と自由財産での弁済のページをご確認下さい。
従業員の給与の支払いも偏頗弁済になってしまう?
従業員への賃金が未払いとなっている場合、従業員の会社に対する賃金請求権も債権の一種であり、これを優先して支払うのは債権者平等の原則に反し、偏頗弁済になるとも思われます。この点、賃金請求権は、法律上取引先への買掛金や金融機関からの借入金等の債権よりも優先的に弁済されるべきとされています。そこで、既に発生している賃金については、これを他の債権者に先立って支払っても、偏頗弁済として扱われることはないのが通常です。ただし、破産申立時に会社に残されている現預金が少ない場合には、破産管財人への引継予納金の確保との兼ね合いで給与の支払いが難しくなることがあります。
また、既に事業を停止していた場合や、破産申立日以降の賃金については、労働との対価性がないため支払いはできません。このうち、後者については、解雇予告手当として支払いができる場合があります。
詳しくは、未払賃金・賞与・退職金の取り扱い、解雇予告手当の支払いをご確認下さい。
偏頗弁済とは?はいかがでしたか?
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