破産手続において換価の対象となる財産は、破産開始決定時の財産に限られます。そうすると、それ以降に得た財産は、財産の種類や評価額の制限なく、破産者が自由に処分できることになります。このように、破産開始決定後に破産者が得た財産を、新得財産といいます。
新得財産の代表例として破産開始決定後の労働の対価としての給与が挙げられます。会社の代表者個人が破産申立てをするケースでは、他の会社に就職して生計を立てる方がほとんどですが、破産開始決定前から持ち越せる自由財産の知識と併せて知っておきたい点について、以下詳しく解説します。
破産申立て後の収入
会社の廃業後、経営者が従前の取引先等に就職することがありますが、このような縁故採用のケースでは、就職の時期についても融通が利くことが多いといえます。そこで、申立前において自由財産の枠がいっぱいになっているような場合には、破産申立後に給与がもらえるよう調整しておくことで、より多くの財産を確保することが可能となります。
具体的には、申立前において、経営者の財産が現金99万円、預金20万円である場合、破産手続開始決定前に30万円の給与を受け取ると、手渡しであっても、振込であっても、この給与の全額が換価対象になってしまいます。振込の場合には、元々口座に入っていた20万円も含めて換価対象となるおそれもあります。そこで、就職の時期を遅らせ、開始決定後に給与を受け取り、新得財産とすることで、30万円全額を保持できることになるというわけです。
破産開始決定前に給与を受け取る場合
現金、預金のどちらに加算されても、全額が換価対象となってしまう。
破産開始決定後に給与を受け取る場合
開始決定後の財産は別立となり、換価対象とならず全額を保持できる。
賃金債権は換価対象とならないのか
破産開始決定後に他の会社に就職した場合には、その会社から得られる賃金が新得財産となることは上記のとおりですが、破産開始決定前に既に就職しており、給与の締日が到来していた場合には、給与を受け取る日が開始決定後であっても、理論上、その給与は賃金請求権という破産開始決定前に生じた債権となりますので、厳密には新得財産には当たりません。会社が廃業済みのケースであれば、開始決定前に就職することも可能ですので、このような場合の給与がどのように扱われるか問題となります。 この点、東京地裁の換価基準によれば、換価対象外とされる財産以外は換価をするものとされており、対象外の財産として差押禁止債権が挙げられています。そして、賃金請求権は、4分の3に相当する金額が差押禁止であるため、残りの4分の1については換価対象になるとも思われます。しかしながら、給与については全額が換価対象と扱われないのが実際の運用となっています。したがって、通常のケースでは、破産開始決定前に就職していた場合でも、上記のように給料日が破産開始決定後になるよう調整すれば、新得財産となる場合と同様に給与全額を保持できることになります。
新得財産と破産申立て後の収入はいかがでしたか?
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