会社の自己破産の申立ては、どこの裁判所に申し立ててもよいというわけではありません。法律上は、当該会社の主たる営業所の所在地を管轄する裁判所等に申立てをしなければならないとされています。しかし、東京地方裁判所では、法律上東京に管轄がない場合でも、日本全国の会社の自己破産申立てを受理する運用となっています。
このような法律の定めとは異なる取扱いについて、債権者を含む利害関係人は異議を述べることができるという見解もあります。しかしながら、現実に東京地方裁判所で申立てが受理され、破産手続開始決定がなされた場合に利害関係人から争われる事例は少ないのに対し、東京地方裁判所での破産申立てには以下のとおり多くのメリットがあるため、当事務所では、地方の会社であっても、可能な限り東京地方裁判所での破産申立てをおすすめしています。
東京で破産申立てするメリット(1)申立て当日に開始決定がなされる
東京地方裁判所では、申立代理人が希望すれば、破産申立てをした当日に破産手続開始決定を下すかどうか判断するための面接を実施します。面接の結果、破産手続開始原因があると判断すれば、通常は申立てをした週の翌週の水曜日に破産手続開始決定を下し、同日、破産管財人を選任するのが原則的取扱いとなっています。
税金の滞納処分が迫っているような場合には、翌週の水曜日まで破産手続開始決定を待っていては、国等から会社の財産を差し押さえられてしまうおそれがあります。このように、緊急性の高い事案について、東京地方裁判所では、申立て当日に破産手続開始決定及び破産管財人を選任するという柔軟な運用が期待できます。
他方、他の裁判所で申立てをした場合の運用は各裁判所で異なります。申立て当日に面接ができない場合もありますが、遅くなった分、破産手続開始決定を下す日程も後ろにずれ込みますので、上記のような緊急性の高い事案では、早期に破産手続開始決定が下されていれば会社に残っていたであろう財産が散逸してしまい、従業員に支払えるはずだった未払給料が支払えなくなってしまう結果になることも想定されます。
東京で破産申立てするメリット(2)安価な予納金
自己破産申立てをするにあたっては、破産手続を行うための費用を予め裁判所に納めなければなりません(予納金)。予納金の額は、負債総額、破産手続で破産管財人が行う業務の処理量に応じて決まりますが、会社の破産申立てをする場合の予納金の目安は以下のとおりとなっています。
負債総額 | 法人予納金 | 個人予納金 |
---|---|---|
4,999万円以下 | 70万円 | 50万円 |
5,000万円以上9,999万円以下 | 100万円 | 80万円 |
1億円以上4億9,999万円 | 200万円 | 150万円 |
5億円以上9億9,999万円 | 300万円 | 250万円 |
10億円以上49億9,999万円以下 | 400万円 | |
50億円以上99億円9,999万円以下 | 500万円 | |
100億円以上 | 700万円 |
このように、負債総額が比較的小さいケースでも、会社と、連帯保証をしている代表者が申立てをする場合には120万円もの予納金が必要となります。この点、東京地方裁判所では、手続の迅速化・費用の低額化を目的として、破産管財人の負担が低額の費用に見合ったものになるよう破産手続を簡素化した少額管財手続が利用できます。元々は、個人の自己破産手続を想定して創設された手続でしたが、東京地方裁判所では、法人の自己破産事件についても、少額管財手続を原則として運用しています。
少額管財手続が利用できる場合には、予納金が、法人・代表者個人分を併せて、最低20万円からという低額に押さえることができます。また、追加で予納金が必要な場合であっても、現金での一括納付が困難であれば、回収予定の売掛金等の会社の財産の中からこれを補う等、当該会社の実態に即した柔軟な対応が可能です。
地方の会社が東京で破産申立てするメリットはいかがでしたか?
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