代表者等が自己破産をしない場合
会社破産の多くのケースでは,代表者等の個人も,会社の債務の連帯保証人になっています。このようなケースでは,会社の代表者等は,会社とは別に個人だけが自己破産をして債務の免責を受けることはできませんので,会社と同時に破産申立てをするのが通常です。
他方,代表者等に,連帯保証その他の債務がほとんどないようなケースでは,代表者等は自己破産をしませんので,会社だけが破産申立てをすることになります。このように会社だけが申立人となる会社破産をご検討の方は,次の点にご留意下さい。
会社だけが自己破産するメリット・デメリット
メリット
①会社が破産することにより,債権者等からの取立てに対応する事実上の負担がなくなる
②債権者が,会社に対する債権を貸倒損失として処理できる
デメリット
①会社固有の現預金がない場合には,個人財産から破産申立費用を捻出する必要がある
②破産申立ての準備,破産管財人の調査への協力,債権者集会への出席等,手間暇もかかる
③代表者等が,破産管財人から損害賠償請求を受ける可能性が生じる
メリット・デメリットの比較検討
上記のとおり,会社だけの自己破産には,代表者等の個人が免責を受け,経済的な再出発をするという最大のメリットがありません。その上で,上記のメリット・デメリットを比較して,破産申立てをするかどうかが問題となります。
会社固有の現預金がある場合には,これを破産申立費用に充てることができますので,①のデメリットはクリアできそうです。ただし,破産手続によって配当が増える見込みがないケースでは,残っている現預金を破産申立費用に使わず,弁済に充てた方が,債権者にとってはメリットが大きいかもしれません(その際には債権者平等の原則に反しないよう注意が必要です)。また,②,③のようなデメリットも,事案によっては見過ごせない事情です。
これに対し,①のメリットとしては,債権者からの連絡や督促状,裁判の呼出しが来なくなるため,これらを受け取る煩わしさから解放されることになります。しかしながら,通知等はすべて無視し,最終的に判決を取られたとしても,被告が会社である以上,個人の財産が差し押さえられることはないとして開き直ってしまえば,このメリットはあまり重要でないことになります(このような対応をお勧めする趣旨ではありません。一つの考え方とご理解下さい)。
このように,会社のみが自己破産をするという選択は,一概にお勧めできるものでないため,会社や代表者等個人,利害関係人の状況を踏まえ,慎重にご検討いただければと思います。
日比谷ステーション法律事務所
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