ある程度の規模があり、従業員数が多い会社では、親睦会を作り、従業員が毎月少額の積立てを行い、宴会や旅行等の費用にしていることがあります。この積立金を管理する口座ですが、法人でない親睦会は、親睦会名義の口座を作ることはできませんので、メンバーの代表者個人名義のものとなります。口座の名義は、「○○会代表××」として、親睦会の名称が入っており、親睦会代表者個人の口座とは区別できるようになっている場合が多いですが、法的には、これは親睦会の口座ではなく、その代表者個人の口座という扱いとなります。
さて、ここで特に問題となるのは、親睦会の代表者が破産する会社の代表者である場合です。この場合、親睦会の積立金が代表者個人の財産とみなされる可能性があります。本来、親睦会の構成員が宴会や旅行のために積み立ててきたお金ですから、会社が破産した場合には返してもらいたいところですが、代表者個人の財産と判断されると、これが換価の対象となり、破産手続きの中で配当を受けることによってしか返還されないこととなります。また、口座を作った金融機関が会社に融資をしており、代表者が連帯保証人となっている場合には、相殺の対象となり、全くお金が戻ってこないことになってしまいます。
上記のとおり、このような積立金の口座名義は、親睦会の名前が入っており、実質的にも個人の財産とは区別して管理されているものですので、破産申立ての準備段階では、個人の財産として申告するのを忘れがちとなります。しかしながら、全く手当をせずに破産申立てに及んでしまうと、上記のように金融機関から相殺される等、財産散逸防止義務に違反してしまうおそれがありますので注意が必要です。
また、金融機関から相殺されなくても、親睦会の構成員にお金を返していいかどうかは、破産管財人に確認する必要があります。代表者個人が預かっているということであれば、その返還請求権が破産債権と扱われ、勝手に返すと偏頗弁済となるおそれがあるからです。
会社に親睦会のような組織がある場合、特に積立金がある場合には、早期に弁護士へご相談されることをお勧めします。
日比谷ステーション法律事務所
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