東京地方裁判所の会社破産(法人)の申立て受理についてで、平成27年5月1日から、管轄に関する運用が変わり、本店が東京都にない場合、東京地方裁判所に管轄を認めるための事情の確認がより慎重になされるようになったことについて解説しました。
このように運用が変更になってから約半年となりますが、「東京地方裁判所に管轄を認めるべきその他の事情がある」として申立てをしたものの、これが認められず、申立てが受理されなかったというケースも実際にあるようです。
最近、日比谷ステーション法律事務所では、隣県に本店がある会社の事案で、上記のようにその他の事情があるとして申立てを行いましたが、このケースでは無事申立てを受理してもらい、破産開始決定日についても、希望どおり当日としてもらうことができました。
ところで、「東京地方裁判所に管轄を認めるべきその他の事情がある」の例として、東京地方裁判所は、「東京都内に債務者の財産がある等、破産法7条各号所定の補充的な管轄があって、事件の性質上、迅速な処理が要請され、債権者の所在等も踏まえ、東京地方裁判所の専門性を活用して手続を進めた方が、債権者及び利害関係人の利益に資すると考えられる場合」を挙げています。
これを分析的にみると、(1)破産法7条各号所定の補充的な管轄があること、(2)迅速な処理が要請され、東京地裁の専門性を活用した手続により債権者等の利益に資すると考えられることの2つの要件を充たす場合であれば、管轄を認めてもらえるものと考えられます。
今回のケースでは、(1)については、都内の業者に対する売掛金があったため、これにより東京都内に債務者の財産があるということができ、(2)については、営業中の会社で、受発注が毎日のように発生していたため、少しでも早い開始決定と管財人による処理により、債権者等の利害関係人の混乱を抑えることができると考えられる、という理論構成をして申立てに臨みました。
ただ、実際には、このように分析的に要件を充たすかという話にはならず、営業中の会社で早く開始決定を出してほしい旨説明して要望すると、上記のように管轄を認めてもらうことができたという結果となりました。
まだ日比谷ステーション法律事務所での事例の集積が十分とはいえませんが、営業中の会社で、柔軟な開始決定により適正な倒産処理が実現できるといえるケースでは、従来どおり都内に本店がない会社であっても、管轄を認めてもらえるのではないかと思われます。
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