会社(法人)破産のご相談の中で、最も多いご質問の一つが、個人的な関係で融資をしてくれた方や、長年支えてくれた取引先などの「どうしても迷惑をかけたくない人に対して何とかお支払いすることはできないか」というものです。
ケースは人それぞれですが、いずれの場合もお気持ちとしては十分理解できます。しかし、どのようなご事情があっても、必ず「してはいけません。」とお答えしています。会社(法人)の破産を検討している段階で、特定の債権者のみに支払いをするのは“偏頗弁済”となってしまうからです。
会社(法人)破産の申立てをするにあたり、少なくと過去2年間の資金の流れは通帳のコピーというかたちで明らかにしなければならないため、裁判所や破産管財人にバレないようにこっそり返済するというようなことは絶対にできません。また、万が一これをやってしまうと、破産管財人を通して取りかえされてしまうことになりますし、経営者個人の免責にも悪影響があるため、弁護士の立場からすると、絶対に“この方だけは仕方ないですね”という答えはできないのです。
では、どうしても迷惑をかけたくない債権者がいる場合には、どうすればよいのでしょうか?
先に述べたとおり、破産申立ての段階では、全ての債権者を平等に扱うしかありません。つまり、特定の債権者にだけ偏った弁済をすることはできません。
しかしながら、破産手続後であれば、迷惑をかけてしまった方に返済をしていくことは何ら制限されていないのです。会社の破産のケースでは、多くの場合、経営者個人も同時に破産をすることになるため、一括で返済するのは難しいのが通常ですが、破産後に稼いだお金の中から少しずつ支払っていくことで、かけてしまった迷惑を軽減する、誠意を示すということはできるということです。
会社の破産手続により目指すことの一つは、経営者の生活の再建ですが、その一環として人間関係を修復するには、上記のような方法があるということをぜひ知っていただきたいと思います。
日比谷ステーション法律事務所
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